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なぜ今、麻疹なのか——2026年の流行を疫学で読み解く

Tasunaro Tasunaro · 感染症専門医
更新 2026年4月30日
なぜ今、麻疹なのか——2026年の流行を疫学で読み解く

「麻疹の流行がまた広がっている」というニュースを、最近よく目にします。

国内で362例(第16週・4月22日時点)、米国で1,792例、バングラデシュで確定2,897例、カナダと英国は既に排除ステータスを失った——こうした断片的な数字は流れてきますが、それが何を意味しているのかは、まとまって見えにくいのが正直なところです。

麻疹は、50年以上かけて積み上げてきた予防の仕組みが今どう立っているかを映す、一種の鏡のような感染症です。2026年の数字は、その鏡に映ったある時点の像にすぎません。

この記事では、その鏡に映ったものを疫学の言葉で読み解いていきます。ここから整理する内容は、抽象論ではなく日本の2026年4月の現状そのものに結びついています。

この記事のポイント

2026年の麻疹流行は国内外の数字・排除認定の状況・審査の動きの3つの観点から整理できる
流行の背景にある「免疫ギャップ」という考え方は、日本では成人世代を中心に議論される
2025年のNEJMレビューが繰り返し述べているのは「世界的な麻疹再興の主因は、ワクチンの失敗ではなく接種が行き届いていないこと」という点

2026年4月、麻疹をめぐって何が起きているか

麻疹の2026年をめぐる情報は、国・指標ごとに散らばっていて、一度に見るのが難しい状態です。まずは3つの観点に分けて整理します。

① 感染負荷の数値

362
日本の2026年累計(第16週・4月22日時点)
前年同期(78例)の4倍超
1,792
米国の2026年累計(4月23日時点)
22アウトブレイク、93%がアウトブレイク関連

日本では、国立健康危機管理研究機構(JIHS)の発生動向調査によると、2026年4月22日(第16週)時点の麻疹累計報告数は362例に達しました。前年同期(78例)の4倍超で、流行は減速していません(第15週62例・第16週57例)。推定感染地域の内訳を見ると、国内感染が259例(72%)、国外感染が33例、国内・国外いずれかが特定できない9例、不明が61例と、海外持ち込みだけでなく、持ち込み後の国内二次感染が大きな柱になっているのが特徴です。医療機関・家庭・学校・施設などでの連鎖が報告されています。年齢分布は20代33%・30代21%・15-19歳17%・40代12%と成人中心で、10-20代だけで全体の約半数を占めます。小児中心の流行ではない、という点が2026年の日本の麻疹の顔立ちです。

国外に目を向けると、米国CDCは2026年4月23日時点で1,792例を報告しています。22のアウトブレイクが発生しており、確定例の93%がアウトブレイク関連で、未接種または接種歴不明の方が多数を占めます。2025年は2,288例で米国の麻疹排除(2000年宣言)以降の年間最多を記録しており、2026年も4か月時点でそれに次ぐペースで推移しています。メキシコでも2026年に大規模な麻疹流行が続き、バングラデシュではWHO Disease Outbreak News(DON598)が2026年3月15日〜4月14日の1か月間に確定例2,897例・死亡166例(致命率0.9%、5歳未満が79%)を報告しています。

② 排除認定の状態

WHOが定める「麻疹排除ステータス」は、国内で土着の麻疹ウイルス伝播が12か月以上確認されない状態を指します。この状態が途切れると排除ステータスは失われます。

2026年4月時点で、状況は次のようになっています。

  • カナダ: 2025年11月にPAHOが排除ステータス喪失を確認(土着伝播が12か月以上持続)
  • 英国: 2026年1月にWHO欧州地域の評価に基づき排除ステータス喪失が確認された
  • 米国・メキシコ: いずれも審査対象

欧米の排除認定国の複数が排除ステータスを相次いで失っている、という状況それ自体は、麻疹の疫学史の中でもあまり見ない光景だと感じます。

③ 制度的タイムライン

汎米保健機構(PAHO)の地域麻疹・風疹排除確認委員会(RVC)は、もともと2026年4月13日に米国とメキシコの排除ステータスを審査する予定でした。しかし2026年3月、米国政府が遺伝子型別解析の追加検討を要請したことを受け、審査は2026年11月の年次会合まで延期されています。

米国の排除ステータスが正式にどうなるかは、現時点では宙に浮いた状態です。カナダ・英国が既に喪失している状況と合わせると、米州全体で、排除認定以降はじめての広範な見直しが進んでいる、と整理できます。

数字だけを並べるとここまでです。次は、これらをどう読めばよいかに進みます。


感染閾値と「集団免疫95%」の意味

麻疹の高い感染力と、集団免疫の閾値を示す概念図

麻疹は、数ある感染症の中でも突出して感染力の高いウイルスです。基本再生産数(R0)は12〜18と見積もられており、1人の感染者が免疫のない集団の中にいると、平均で12〜18人に感染が広がる計算になります。インフルエンザのR0が2〜3、COVID-19はオミクロン株でも5〜10程度と推定されていることと比べても、桁違いの感染力です。

この感染力に対して流行を抑えるには、集団全体の約95%以上が免疫を持っている必要があるとされます。NEJMの最新レビューは、この点について次のように書いています。

Because the measles virus has a high reproduction number, high coverage of both doses of measles vaccine (≥95%) at the population level is required to maintain effective herd immunity against measles transmission.

(麻疹ウイルスは再生産数が高いため、集団レベルで麻疹ワクチンの2回接種カバレッジ95%以上を達成することが、集団免疫の維持に必要である)

ただし、95%という目安は実務的にはかなり高いハードルです。NEJMレビューによれば、米国では直近の郡単位のMMR接種率分析で、1,501郡のうち990郡(66%)が95%未満、70郡では74%未満でした。

ここで注意したいのは、これを「米国はひどい」という話として読むのではなく、「国全体のカバレッジが高く見えても、局所クラスター単位では保護が破られうる」という構造の例として読むことです。実際、米国の感染者の94%は集団感染の連鎖由来です。つまり、特定の地域・コミュニティ・世代にギャップが点在していて、そこから連鎖が始まっています。

日本の状況を見ると、MRワクチンの全国カバレッジは平均的にはかなり高い水準にあります。しかし「平均的には高い」と「どこにもギャップがない」は同じ意味ではありません。そのギャップをどう捉えればよいかが、次の問いになります。


「免疫ギャップ」という考え方

麻疹の免疫ギャップとは:免疫なしが散らばっている状態と、免疫ギャップ(かたまり)がある状態の比較。同じ人数でも「かたまり」のほうが危険

疫学の世界で「免疫ギャップ(immunity gap)」と呼ばれるのは、集団の中に免疫を持たない層、あるいは持っていても弱まっている層が点在している状態のことです。全体の平均カバレッジが95%に近くても、ギャップがまとまって存在すれば、そこで連鎖が起こり得ます。

免疫ギャップの源泉は、大きく分けると3つあります。日本の2026年の流行との関連度が高い順に整理します。

中心にあるもの: 接種不足・接種未完了・接種歴不明

日本の2026年の麻疹症例は、どのような接種歴の人に起きているのでしょうか。JIHSの第16週時点(4月22日)の累計362例の接種歴の内訳は、以下のとおりです。

接種歴例数割合
接種なし64約18%
1回接種42約12%
2回接種105約29%
不明151約42%

2回接種後の発症も約29%(105例)と無視できない数ですが、未接種・1回接種・不明を合わせると約71%(257例)を占めます。日本の2026年の症例の中心には、やはり接種の不足・未完了・確認不能があります。後述するNEJMレビューの核心メッセージとも、同じ方向を指しています。

2回接種の保護効果は集団レベルで約97%と高く、未接種・1回接種と比べれば感染リスクは大きく下がります。ただし「ゼロになる」わけではなく、上記のように2回接種後の発症も一定数報告されています。ここで強調したいのは、2回接種という戦略が揺らぐ話ではない、という点です。むしろ大事なのは、2回接種を確実に完了することと、接種記録を確認しておくことの両方です。MRワクチンの定期接種スケジュール(第1期・第2期)や成人の追加接種・抗体価測定の流れについては、MMRワクチン 2026年の日本の状況と接種ガイド でまとめています。「不明」が約42%と最大の割合を占めている事実は、そのまま記録確認の重要性を示しています。

背景にある日本固有の事情として、「原則1回接種世代」の存在があります。1回接種では一定の取りこぼしが残るため、WHOや各国の推奨は2回接種を基本としています。この世代の制度的な位置づけは、次のセクションで整理します。

副因となる層: 未接種・接種率低下世代

COVID-19パンデミックの間、各国で小児の定期接種が一時的に滞りました。WHOの集計ではグローバルな麻疹1回接種カバレッジは81%まで落ち込み、その後83%(2022〜23年)まで回復しているものの、パンデミック前の水準には完全には戻っていません。特に低所得国では64%、中所得国でも86%にとどまっています。

パンデミック期の接種遅れ世代が、今後数年にわたって免疫の低い層として集団内に存在することになります。これが副因です。

概念的背景: 乳児期の母体抗体減衰

もうひとつ、概念的な背景として知っておく価値があるのは、乳児期の母体抗体の減衰です。NEJMレビューに引用されているカナダの研究(2014〜2016年)では、生後3か月の乳児の90%以上で、母体由来の麻疹抗体が保護域を下回っていました。複数国のモデル研究では、生後4か月で70〜88%、6か月では100%がseronegative(抗体陰性)になるとも推定されています。

これは「昔の乳児より今の乳児のほうが、母親由来の免疫が早く切れている」という傾向を示す興味深い所見です。ただし、日本の2026年の流行で実際に前面に立っているのは成人世代であって、この乳児期の感受性は流行の主因ではありません。あくまで免疫ギャップという概念の一般的な背景として位置づけるのが妥当でしょう。

ここまでを整理すると、日本の2026年の麻疹流行は、NEJMが指摘する世界的な構造と同じ方向を向いています。接種不足・未完了・接種歴不明が中心にあり、その背景に「原則として2回の接種機会がなかった世代」の存在がある。いまのところ、この読み方がいちばん自然です。


日本ならではの事情を、3つに分けて見る

日本の状況をもう少し踏み込んで見るときに、3つの異なる性質の要因を分けて考えると見通しが立ちやすくなります。既にある感受性、接種プログラムへの最近の打撃、そして2026年に増える伝播機会です。

① 既にある感受性: 2回接種機会がなかった世代

先ほど触れた通り、1972年10月1日〜1990年4月1日生まれは原則1回接種世代にあたります(麻疹ワクチンは1978年10月に定期接種化、当時の対象は生後12〜72月の小児でした)。1990年4月2日〜2000年4月1日生まれは、中学1年・高校3年相当でのキャッチアップ接種(2008年度〜2012年度の第3期・第4期)で2回目の機会があった世代ですが、実際に受けていない人も含まれます。JIHSの第16週(4月22日)時点のデータでは、20代33%・30代21%・15-19歳17%・40代12%という分布で、10-20代だけで全体の約半数を占めます。この年齢分布は、既にある感受性の存在を示唆する所見です。

接種歴の確認方法や、自分の世代が何回接種したかの判断材料については、2026年春、はしかが増えている——流行の現状と今できること にまとめてあります。

② 接種プログラムへの最近の打撃: 武田薬品回収と特例措置

2024年の一部製品の自主回収以降、MRワクチンの供給には地域差や医療機関ごとの差が生じてきました。厚生労働省は対応策として、定期接種対象者の接種期間を2年間延長(2027年3月31日まで)する特例措置を実施しています。

この回収は「既にある感受性」に対する、直近数年の追加的なショックという性質を持っています。平常時であれば定期接種で自然にカバーされていたはずの層に、追加の不確実性が重なった形です。厚生労働省は2026年度の納入量について例年と同等以上の見込みとしていますが、1社製品は2026年6月頃まで出荷停止見込みであり、医療機関によって在庫状況は異なります。

③ 2026年に増える伝播機会: アジア競技大会

2026年9月19日〜10月4日に、愛知・名古屋で第20回アジア競技大会が開催される予定です。45の国・地域から選手・関係者が集まり、観客を含めた人の移動も増加することが見込まれています。

ここで注意したいのは、大会と国内の麻疹流行の因果関係が、現時点で確認されているわけではないという点です。私自身、現時点でこの2つを直接結びつける証拠は知りません。ただ、伝播機会が増える時期として注視されていることは事実で、JIHSは麻疹・風疹・水痘についてワクチン接種歴の確認を呼びかけています。

「既にある感受性」「接種プログラムへの最近の打撃」「伝播機会の拡大」という3つの要因が、2026年のある時期に重なっている。そう整理すると、日本特有の文脈が見えやすくなります。


NEJMレビューが繰り返し述べていること

ここまでの整理の背景には、2025年6月にNEJMに掲載されたレビュー論文「Measles 2025」があります。著者は Lien Anh Ha Do 氏(メルボルンの Murdoch Children’s Research Institute)と Kim Mulholland 氏(London School of Hygiene & Tropical Medicine)の2名です。Mulholland 氏は長崎大学の所属も持っています。

このレビューを読んで印象に残るのは、テクニカルな内容よりも、繰り返し述べられている1つのフレーズのほうです。

The primary cause of the resurgence in measles cases is failure to vaccinate, not failure of the vaccine.

(麻疹症例再興の主因は、ワクチンの失敗ではなく、接種そのものの失敗である)

世界的な麻疹再興をめぐる疫学データの積み上げから導かれた結論です。非常に短い一文ですが、読み返すたびに意味の重みが増します。

先に見たとおり、日本の2026年の症例分布(第16週時点で接種なし・1回・不明が約71%)もこの枠組みと矛盾しません。「ワクチン有効性が落ちたのでは?」という直感を、ひとまず脇に置いて考えるきっかけになります。

レビューはもうひとつ、触れておく価値のある点を述べています。麻疹には一時的な免疫の記憶喪失(immune amnesia)という現象があり、感染後にB細胞・T細胞の記憶レパートリーが一部消失することで、回復後もしばらく他の感染症にかかりやすくなる可能性があるという指摘です。

麻疹は「発疹が治れば終わり」という単純な病気ではなく、数か月〜1年規模で免疫系に影響を残すかもしれない、ということは覚えておく価値があります。

このレビューが2025年6月に書かれ、2026年4月の現在、書かれている内容がそのまま目の前の状況を説明している。その構図自体、ワクチン普及の60年で何度も繰り返されてきたことなのかもしれません。接種が行き届いた時代には麻疹は姿を消し、接種が崩れた時代に戻ってくる。予防という仕組みは「完成した制度」ではなく、「維持し続けるもの」だという当たり前が、改めて前に出てきている印象です。


数字を手がかりに、自分の位置を考える

ここまでの整理をもう一度並べ直すと、こうなります。

  1. 2026年の麻疹は、日本・米国・国際それぞれで通常ではない水準の動きを見せている
  2. 流行の構造は「全国平均が高くても局所クラスターが保護を破る」という形で理解できる
  3. 日本の2026年の症例の中心にあるのは接種不足・未完了・接種歴不明で、背景に「原則として2回の接種機会がなかった世代」の存在がある
  4. 日本ならではの事情として、既にある感受性・接種プログラムへの打撃・伝播機会の拡大が重なっている
  5. NEJMレビューの核心メッセージは「世界的な麻疹再興の主因は、ワクチンではなく接種が行き届いていないこと」

これらの数字や整理は、不安を煽るためのものではなく、読者が自分の状況を考える手がかりとして眺めていただければと思います。

外来でこの話題が出るとき、患者さんは「数字そのもの」よりも「自分の世代がどう位置づけられるか」を気にしていることが多いと感じます。1回接種世代なのか、2回接種世代なのか、キャッチアップを受けたかどうか。それが分かるだけで、その後の判断はずっとシンプルになります。

具体的な確認方法は、姉妹記事の「2026年春、はしかが増えている——流行の現状と今できること」にまとめてあります。世代別の接種スケジュール・抗体価検査の選択肢など、MRワクチン側の実務情報を中心に整理した「MMRワクチン 2026年の日本の状況と接種ガイド」も合わせて参考になります。


数字の向こうには、いつも「自分では身を守れない人」がいます。免疫不全の方、妊婦の方、月齢の低い赤ちゃん。こうした人たちは、周囲の十分な免疫がなければ、どれだけ気をつけても麻疹から自分を守ることができません。

自分の位置を知ることは、個人の話のようで、実は自分以外の誰かを守る話でもあります。集団免疫とは、そういう相互依存の言い換えです。

麻疹は特別な感染症ではありません。ただ、その感染力の高さゆえに、集団の中の小さなギャップを敏感に拾い上げてしまう性質があります。2026年の数字を見て何か思うことがあったら、まずは一度、自分の生まれ年を指差すところから始めてみてください。その一歩が、自分を守るだけでなく、まだワクチンを打てない誰かを守ることにもつながります。


参考文献

  1. Do LAH, Mulholland K. Measles 2025. N Engl J Med. 2025. doi:10.1056/NEJMra2504516

  2. JIHS. 麻疹 発生動向調査 速報グラフ 2026年 第16週(2026年4月22日現在). https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/idwr/diseases/measles/graph/2026/meas26-16.pdf(参照日: 2026-04-30)

  3. JIHS. 麻疹 発生動向調査 速報グラフ 2026年. https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/idwr/diseases/measles/graph/2026/index.html(参照日: 2026-04-30)

  4. JIHS. 麻しん含有ワクチンの定期接種と供給状況について(IASR Vol.46/545). https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/iasr/IASR/Vol46/545/545r10.html(参照日: 2026-04-30)

  5. CDC. Measles Cases and Outbreaks (2026 in the United States). https://www.cdc.gov/measles/data-research/index.html(参照日: 2026-04-30)

  6. WHO Disease Outbreak News (DON598). Measles – Bangladesh. 2026年4月22日. https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2026-DON598(参照日: 2026-04-30)

  7. PAHO. Update on the review of measles elimination status. https://www.paho.org/en/news/2-3-2026-update-review-measles-elimination-status(参照日: 2026-04-30)

  8. PAHO. Measles elimination status in the United States and Mexico. https://www.paho.org/en/news/16-1-2026-measles-elimination-status-united-states-and-mexico(参照日: 2026-04-30)

  9. Venkatesan P. UK loses measles elimination status as cases rise. Lancet Infect Dis. 2026. doi:10.1016/S1473-3099(26)00111-8

  10. 厚生労働省. 麻しん風しん混合(MR)ワクチンの供給状況について. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou03/index_00002.html(参照日: 2026-04-30)

  11. WHO. Measles vaccines: WHO position paper — April 2017. Wkly Epidemiol Rec. 2017;92(17):205-228. https://www.who.int/teams/immunization-vaccines-and-biologicals/policies/position-papers/measles(参照日: 2026-04-30)

よくある質問

「集団免疫95%」とはどういう意味ですか?
麻疹は基本再生産数(R0)が12〜18と非常に高く、1人の感染者から平均12〜18人に広がる可能性があります。この感染力に対して流行を抑えるには、集団全体の95%以上が免疫を持っている必要があるとされます。WHOとNEJMの最新レビューも、2回接種カバレッジ95%以上を集団免疫維持の目安として挙げています。
1回接種だけでは免疫として不十分ですか?
1回接種でも多くの方に免疫がつきますが、一定の取りこぼしが残るため、WHOや各国の推奨は2回接種を基本としています。2回接種を徹底することで集団レベルの保護が安定します。NEJMレビューでは、2回接種済みでも抗体価が下がっているsecondary vaccine failureの事例も13〜30歳を中心に報告されていますが、再興の主因はあくまで接種の不足・未完了です。
成人への追加接種の議論は、疫学的にどう位置づけられますか?
個人レベルの推奨ではなく、集団レベルでの議論として捉えると見通しが立ちやすくなります。免疫ギャップが集団内に点在している場合、局所的なクラスターが保護を破る可能性があるため、追加接種は「個人防御」だけでなく「集団免疫の維持」という意味合いも持ちます。日本では、1972年10月1日〜1990年4月1日生まれの原則1回接種世代と、1990年4月2日〜2000年4月1日生まれでキャッチアップを受けていない層が、その議論の中心に位置づけられています。
カナダや英国の「排除認定喪失」とは何を意味しますか?
WHOが定める「麻疹排除ステータス」は、土着の麻疹ウイルス伝播が12か月以上確認されない状態を指します。この状態が途切れると排除ステータスを失います。カナダは2025年11月、英国は2026年1月にそれぞれ喪失とされました。米国とメキシコは2026年11月のPAHO年次会合で審査が予定されています。
2026年秋のアジア大会で麻疹のリスクは高まりますか?
第20回アジア競技大会は2026年9月に愛知・名古屋で開催予定です。大会と国内流行の連鎖が現時点で確認されているわけではありませんが、国際的な伝播機会が増える時期として注視されており、JIHSもMRワクチン2回接種の確認を呼びかけています。

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Tasunaro
Tasunaro
感染症専門医
日本感染症学会専門医抗菌化学療法指導医国際渡航医学会認定医DTM&H

医師になって10年以上、感染症の診療を続けています。 査読論文や医学書の執筆経験を活かし、最新のエビデンスに基づいた情報をお届けします。

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本記事は医療情報の提供を目的としており、診断・治療の代替となるものではありません。