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MMRワクチン 日本で33年ぶり復活|2026年接種開始はいつから?

Tasunaro Tasunaro · 感染症専門医
更新 2026年5月4日
MMRワクチン 日本で33年ぶり復活|2026年接種開始はいつから?

2026年3月2日、薬事審議会医薬品第二部会が、第一三共の開発した「ミムリット」の承認を了承しました。ミムリットは、麻疹(はしか)・風疹・おたふくかぜを1本にまとめたMMRワクチンです。

日本にMMRワクチンが今日に至るまで存在しなかったのには、理由があります。1989年に導入されたMMRワクチンは、わずか4年後の1993年に廃止されました。ムンプス(おたふくかぜ)成分に使われていたウイルス株が原因で、無菌性髄膜炎(脳と脊髄を包む膜に炎症が起きる状態)が多発したためです。それ以来、日本では麻疹と風疹のみの2種混合(MRワクチン)が使われ、おたふくかぜは「任意接種」として取り残されてきました。

33年間、主要先進国のなかでおたふくかぜが定期接種でなかった日本で、何が変わったのか。自分の接種歴の確認方法とあわせて整理します。

この記事のポイント

2026年3月2日、薬事審議会医薬品第二部会が第一三共の新MMRワクチン「ミムリット」の承認を了承(正式承認は今後)。日本で33年ぶりのMMR復活へ
1993年の廃止原因はUrabe系統のおたふくかぜ成分の問題。新ワクチンはJeryl Lynn由来のRIT4385株に変更し、欧米で豊富な使用実績を持つ
おたふくかぜは日本の前向き研究で約1,000人に1人が難聴に。主要先進国のなかで定期接種に含めていなかったのは日本だけだった
1978〜1989年度生まれは麻疹1回接種世代。母子手帳で接種歴を確認したい

MMRワクチンとは——3種を1本にまとめたワクチン

MMRワクチンは、Measles(麻疹)・Mumps(おたふくかぜ)・Rubella(風疹)の英語頭文字をとった3種混合ワクチンです。1回の接種で3つの感染症への免疫を獲得できる生ワクチンで、100を超える国・地域で使用されており、多くの国で定期接種に組み込まれています。

日本では麻疹と風疹の2種混合(MRワクチン)を1歳と就学前の計2回接種します。おたふくかぜは含まれておらず、希望する場合は自費の「任意接種」です。MMRとMRの違いは、ムンプス(おたふくかぜ)が入っているかどうか——ただ1点です。

1993年の廃止——なぜ33年間なかったのか

日本でMMRワクチンがなかったのは、制度上の空白ではなく、過去の出来事に理由があります。

1989年(平成元年)、日本は国産のMMRワクチンを定期接種として導入しました。しかし、世界の流れに沿ったこのワクチンは導入直後から問題が起こります。接種を受けた子どもたちに、無菌性髄膜炎が相次いで報告されたのです。

問題の原因は、ムンプス成分に使用されていたウイルス株にありました。当時国内で使用されていたおたふくかぜワクチン成分——とくにUrabe系統に属する株——が、無菌性髄膜炎の高頻度と関連していることが後に判明します。製造過程をめぐる問題も指摘されました。1993年4月、当時の厚生省はMMRワクチンの接種を中止しました。

当時の記録では約183万人が接種を受けたとされ、救済制度のもとで1,040人が健康被害として認定、3名が死亡しています。この出来事は、日本の予防接種行政に長く影を落としました。

MMRワクチン日本の歴史タイムライン:1989年導入→1993年廃止→33年間の空白→2026年ミムリット承認了承

MMR廃止後、日本は麻疹と風疹のみのMRワクチンへと切り替えます。おたふくかぜは定期接種から外れ、「任意接種」のまま今日に至っています。

新ワクチン「ミムリット」——何が変わったのか

ミムリットで最大の変更点は、ムンプスのウイルス株です。

1993年に廃止されたワクチンで問題になったのは「占部株」(Urabe系統に分類される株)でした。ミムリットが使用するムンプス成分は「RIT4385株」——欧米で何十年もの使用実績を持ち、無菌性髄膜炎との関連が相対的に低いとされるウイルス株です。麻疹・風疹の成分は、現在の日本のMRワクチンと同じものをそのまま使用しています。

国内のPhase III試験では、5〜6歳の健常小児を対象に、2回目接種(就学前)としての免疫原性・安全性が評価され、良好な結果が報告されています。

ミムリットの定期接種化については、現時点で厚生労働省が検討中の段階です。承認後に定期接種として組み込まれれば、おたふくかぜの予防が公費負担になり、接種率の大幅な向上が期待されます。

接種をためらう方へ——「MMRと自閉症」の誤情報について

1998年に英国で「MMRワクチンが自閉症を引き起こす可能性がある」とする論文が医学誌に掲載され、多くの国で接種率の低下をもたらしました。しかし、この研究はその後、データの捏造が発覚して撤回されています。

撤回後に行われた複数の独立した疫学研究——デンマークの53万人コホート(NEJM 2002年)、英国の症例対照研究(Lancet 2004年)、日本の横浜市のデータ(J Child Psychol Psychiatry 2005年)、65万人を対象としたデンマークの大規模コホート(Ann Intern Med 2019年)——はいずれも「因果関係はない」と結論付けています。2021年のコクラン・システマティックレビューも同様です。

おたふくかぜ——見過ごされてきた後遺症

おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)は、顔が腫れて発熱する、ありふれた子どもの病気のように見えます。ほとんどの場合は1〜2週間で回復します。しかし後遺症として知られる「ムンプス難聴」は、軽くない問題です。

おたふくかぜ感染後に難聴が残る割合は、日本の前向き研究で約1,000人に1人と報告されています。全国調査でも多数例が確認されており、実際の患者数はさらに多い可能性があります。

ムンプスウイルスが内耳を侵すことで起きるこの難聴は、多くの場合、治療しても回復しません。片耳が全く聞こえなくなる一側性難聴が多く、就学前後の子どもに多いとされています。おたふくかぜの回復後に気づくことが多く、発見が遅れやすいのも特徴です。

注意が必要なのは、子どもだけではありません。ムンプスワクチン接種後の免疫は年月とともに低下することが知られており、ハーバード公衆衛生大学院の研究グループは平均27年で減衰すると推計しています。人によっては17年程度で低下する可能性もあり、幼少期に接種を受けた成人でも感染リスクはゼロではありません。MMRを長年定期接種として使用してきた国々でも患者数は大きく減少した一方、ワクチン免疫の減衰を背景に流行はなお起こりえます。

妊娠を希望する女性にとっても、おたふくかぜは確認しておきたい感染症のひとつです。妊娠初期のムンプス感染では流産リスク上昇の可能性が示唆されていますが、根拠は限定的です。また、MMRワクチンは生ワクチンのため、妊娠中は接種できません。接種歴がない、または不明な場合は、妊娠前に済ませておくことが望ましく、接種後は2か月程度の避妊が必要です。

世界で麻疹が増えている

ミムリット復活の背景にあるのは、おたふくかぜだけではありません。MMRという枠組みで議論されるもう一方の柱、麻疹(はしか)の状況も深刻さを増しています。

2,285
米国の麻疹報告数(2025年・年間)
排除宣言(2000年)後の過去最多
1,575
米国の麻疹報告数(2026年・3月27日時点)
前年ペースを上回って推移

背景にあるのは、接種率の低下です。米国の幼稚園入学前の麻疹ワクチン2回接種率は、2019〜2020年度の95.2%から2024〜2025年度には92.5%まで低下しました。集団免疫が成立するには95%以上の接種率が必要とされており、その閾値を下回った状態が続いています。2025年11月には、米州保健機関(PAHO)がアメリカ大陸全体の麻疹排除認定を喪失したと発表しました。

日本でも2026年に入り、麻疹の報告数が増加しています。流行の詳細と今できる対策については、「2026年春、はしかが増えている」でまとめています。


自分の接種歴を確認しよう

MMRは3つの感染症に対するワクチンです。麻疹だけでなく、風疹とおたふくかぜの接種歴もあわせて確認しておきましょう。

麻疹・風疹はMRワクチンとして同時接種されるため、接種歴の傾向はほぼ共通しています。世代別の詳しい整理は「2026年春、はしかが増えている」をご覧ください。制度上の1回接種世代の中心は1973年10月ごろから1990年4月1日生まれで、なかでも1978〜1989年度生まれは免疫が不十分な可能性があります。

風疹については、1962〜1978年度生まれの男性に注意が必要です。当時の接種制度では風疹ワクチンが女性のみを対象としていたため、この世代の男性は未接種の方が少なくありません。感染して周囲の妊婦にうつすリスクがあることから、接種歴の確認が勧められます。

おたふくかぜ(ムンプス)は、2026年時点でまだ定期接種に組み込まれていません。全世代で任意接種のため、母子手帳に記録がない場合は接種を受けていない可能性があります。

確認ステップ

  1. 母子手帳を確認する — 麻疹・風疹・おたふくかぜの接種記録が書かれています。
  2. 麻疹・風疹の接種歴が1回以下または不明 → かかりつけ医に相談 — MRワクチンの追加接種を検討できます。抗体検査で免疫状態を先に確認してから判断する方法もあります。
  3. おたふくかぜの接種歴がない → ムンプス単独ワクチンを検討 — 現時点では自費の任意接種です。かかりつけ医に相談してみてください。

主要先進国の中でおたふくかぜを定期接種に含めていなかったのは、1993年以降の日本だけでした。MMRワクチンの復活は、その33年間の空白を埋める一歩です。小児の定期接種化、そして成人の任意接種がどう扱われるか——次の展開を引き続き注目していきます。

なお、ワクチン免疫の減衰と追加接種の問題は百日咳でも深刻化しています。詳しくは「「百日咳はマクロライドで治る」はもう古い」をご覧ください。


参考文献

  1. Nakayama T, et al. Immunogenicity and safety of the new MMR vaccine containing measles AIK-C, rubella Takahashi, and mumps RIT4385 strains in Japanese children: a randomized phase I/II clinical trial. Hum Vaccin Immunother. 2019;15(5):1139-1144. doi:10.1080/21645515.2019.1578591
  2. 兵庫県小児科医会. おたふくかぜと難聴. https://hyogo-pa.org/survey/mumps/(参照日: 2026-03-31)
  3. CDC. Measles Cases and Outbreaks. https://www.cdc.gov/measles/data-research/index.html(参照日: 2026-03-31)
  4. Madsen KM, et al. A population-based study of measles, mumps, and rubella vaccination and autism. N Engl J Med. 2002;347(19):1477-1482. doi:10.1056/NEJMoa021134
  5. Smeeth L, et al. MMR vaccination and pervasive developmental disorders: a case-control study. Lancet. 2004;364(9438):963-969. doi:10.1016/S0140-6736(04)17020-7
  6. Honda H, et al. No effect of MMR withdrawal on the incidence of autism: a total population study. J Child Psychol Psychiatry. 2005;46(6):572-579. doi:10.1111/j.1469-7610.2005.01425.x
  7. Hviid A, et al. Measles, mumps, rubella vaccination and autism: a nationwide cohort study. Ann Intern Med. 2019;170(8):513-520. doi:10.7326/M18-2101
  8. Di Pietrantonj C, et al. Vaccines for measles, mumps, rubella, and varicella in children. Cochrane Database Syst Rev. 2021;(11):CD004407. doi:10.1002/14651858.CD004407.pub5
  9. Lewnard JA, et al. Vaccine waning and mumps re-emergence in the United States. Sci Transl Med. 2018;10(433):eaao5945. doi:10.1126/scitranslmed.aao5945
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  11. Nakayama T, et al. Phase III, open-label, single-arm study of a new MMR vaccine (JVC-001); measles AIK-C, mumps RIT 4385, rubella Takahashi, as a second vaccine dose in healthy Japanese children aged 5-6 years. J Infect Chemother. 2024;30(12):1289-1294. doi:10.1016/j.jiac.2024.06.011

よくある質問

MMRワクチン「ミムリット」はいつから打てますか?
2026年3月に薬事審議会で承認が了承されましたが、正式承認はこれからです。定期接種化も検討中の段階で、具体的な接種開始時期はまだ決まっていません。
以前のMMRワクチンで問題が起きたのに、今回は大丈夫ですか?
1993年に問題になったのはUrabe系統のおたふくかぜ成分でした。新しいミムリットはRIT4385株という、欧米で何十年もの使用実績があり無菌性髄膜炎との関連が相対的に低いウイルス株に変更されています。
MMRワクチンと自閉症は関係ありますか?
関係ありません。1998年にそう主張した論文はデータ捏造が発覚して撤回されています。その後の複数の大規模研究やコクランレビューでも因果関係は否定されています。
おたふくかぜのワクチンを打っていない場合、どうすればいいですか?
おたふくかぜは2026年時点でまだ定期接種ではありません。母子手帳に接種記録がない場合は、ムンプス単独ワクチンの自費接種をかかりつけ医に相談してください。
おたふくかぜで難聴になることがありますか?
はい。日本の前向き研究では約1,000人に1人がおたふくかぜ感染後に難聴を発症すると報告されています。多くの場合、治療しても回復しない一側性の難聴です。
MMRワクチンとMRワクチンの違いは何ですか?
MMRはMeasles(麻疹)・Mumps(おたふくかぜ)・Rubella(風疹)の3種混合、MRは麻疹と風疹の2種混合です。ムンプス(おたふくかぜ)が入っているかどうか——ただ1点が違いです。日本では2026年時点でMRが定期接種で、MMR(ミムリット)は正式承認後に切り替えが検討されています。
麻疹の流行が続いていますが、追加でMRワクチンを打った方がいいですか?
1回接種世代(制度上は1973年10月ごろ〜1990年4月1日生まれ、なかでも1978〜1989年度生まれが中核)で、母子手帳の接種記録が1回以下または不明な方は、追加接種を検討する価値があります。流行状況の詳細は[「日本の麻疹(はしか)流行状況2026」](/blog/measles-outbreak-2026/)、世代ごとの免疫ギャップの考え方は[「麻疹の免疫ギャップ」](/blog/measles-immunity-gap-2026/)もあわせてご覧ください。
接種歴が不明な場合、抗体検査と追加接種のどちらを先にすべきですか?
どちらでも構いません。抗体検査(自費で数千円程度)で免疫状態を先に確認してから判断する方法と、抗体検査をせずに追加接種する方法があります。追加接種は過去の接種にかかわらず安全性に大きな問題はないため、費用と時間の優先順位でかかりつけ医に相談してください。

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Tasunaro
感染症専門医
日本感染症学会専門医抗菌化学療法指導医国際渡航医学会認定医DTM&H

医師になって10年以上、感染症の診療を続けています。 査読論文や医学書の執筆経験を活かし、最新のエビデンスに基づいた情報をお届けします。

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本記事は医療情報の提供を目的としており、診断・治療の代替となるものではありません。